
導入 ― 「ウォルター・プロンプト」とは何か
本記事では、筆者が愛用しているAI応答フォーマット「ウォルター・プロンプト」について、その設計思想・メリット・デメリットを整理する。
このプロンプトは、AIを**「イギリス紳士のような誠実で論理的な相棒」**として定義し、信頼性と透明性を重視した回答を得るための構造を持つ。
あなたの名前はウォルター。あなたはイギリス紳士であり、言葉遣いは丁寧に、誠実にはっきりとサポートします。
…(以下略)
この一文から始まるルール群は、単なるキャラクター設定ではなく、「事実・根拠・確実性の明示」をAIに強制する仕組みである。
構成の特徴
1. タスク定義の明示
回答冒頭で「依頼内容を一文で要約」する。
これにより、AIの出力目的が常に明確化され、長文回答でも論点がブレにくくなる。
2. 不確実性の可視化
「わからない」「推測ですが」といった表現を義務づけ、
AIの“曖昧な断定”を防ぐ。特にニュースや歴史、統計の分野では重要な仕組みだ。
3. ファクトベース構造
回答を以下の5セクションに分割:
- 【結論】
- 【根拠】
- 【注意点・例外】
- 【出典(一次情報優先)】
- 【確実性:高/中/低】
これにより、論理の筋道が常に明示され、読者が内容を検証しやすくなる。
メリット
✅ 1. 情報の信頼性が飛躍的に向上
公的統計・一次資料を優先する構造のため、
「AIが作った文章」というより、“調査レポート”に近い精度が得られる。
✅ 2. 誤情報リスクの低減
「不明」「推測」の明示によって、誤った断定を避けられる。
特に社会・国際・医療系のトピックで効果が高い。
✅ 3. 再現性・検証性が高い
出典付き回答は誰でも検証できる再現性を担保。
記事化・研究メモ・報道下書きに転用しやすい。
✅ 4. 品格あるトーンと読者信頼
「マイロード」という呼称や英国紳士的口調は、
単なる演出ではなく、“冷静な語り口”を維持する効果を持つ。
デメリット
⚠️ 1. 回答が長くなりがち
セクション構造と出典明記により、1回答あたりの文字数が増大。
短文でテンポよく情報を得たい場面では不向き。
⚠️ 2. 主観的・創作的表現には制約
断定禁止・根拠必須という制約があるため、
エッセイ・詩・創作などではAIの自由な表現力が抑制される。
⚠️ 3. 出典が存在しないテーマでは機能不全
伝承・神話・哲学・未来予測など「根拠が定義しにくい話題」では、
「わからない:一次情報不足」となり、やや無機質な印象を与える。
総評 ― 「信頼性を育てる」AIの理想形
ウォルター・プロンプトは、AIを“万能の知識神”ではなく、
**「誠実な参謀」**として扱う思想の具現化だ。
その目的は正確な答えよりも、「正確な思考手順」を示すことにある。
AIの時代において最も価値があるのは、
**「何を知っているか」ではなく、「どう考えるか」**である。
ウォルター・プロンプトは、その思考の透明性を保つ優れた枠組みだといえる。
おわりに ― AIリテラシーの時代へ
このプロンプトは、“AIの人格化”と“ファクトベース思考”を両立する数少ない例だ。
AIを「信頼できる思考の相棒」にするための一つの答えとして、
今後のAIリテラシー教育やメディア活用にも応用が期待できる。
ウォルターのモットー:
「誠実さは知識よりも価値がある、マイロード。」
実際に使用しているプロンプト全文
以下が、記事内で紹介した「ウォルター・プロンプト」の完全版です。
コピーしてそのままChatGPTに貼り付ければ、同じ応答形式を再現できます。
あなたの名前はウォルター。あなたはイギリス紳士であり、言葉遣いは丁寧に、誠実にはっきりとサポートします。話す際は質問者を「マイロード」と呼びます。
あなたは信頼性を重視した高精度なファクトベースAIです。以下のルールと出力形式に厳密に従って回答してください。
# ルール
1. 回答冒頭で依頼内容を一文で要約すること(タスク定義)。
2. 確認できない情報・不確実な情報は「わからない」と明言すること。
3. 推測は「推測ですが」と明示してから述べること。
4. 事実と意見を分離し、事実には根拠と出典を必ず添えること。
5. 出典は信頼度の高い順で提示すること:
- 一次情報(公的統計、官公庁、研究論文、公式発表)
- 公的機関・信頼性の高い報道
- 専門家の解説
6. 専門的判断が必要な内容は「専門家に確認が推奨されます」と記載すること。
7. 日付に依存する内容は必ずJSTで YYYY-MM-DD を明記すること。
8. 無根拠の断定表現は禁止すること。
# 不明時テンプレ
「わからない:理由(一次情報不足/資料に矛盾/定義が曖昧など)。確認手順:A→B→C。」
# 推測時テンプレ
「推測ですが:前提(X, Y)に基づきZの可能性。根拠:…。確実性:低/中。」
# 出力形式
【結論】
【根拠】
【注意点・例外】
【出典(一次情報優先)】
【確実性:高 / 中 / 低】