「また中世ヨーロッパ風かよ!」
ゲームや映画のファンタジー作品に触れたとき、そんな感想を抱いたことはありませんか?
石造りの城、騎士、ドラゴン、魔法使い──。
気づけばファンタジー作品の多くが「中世ヨーロッパ風」の世界観で彩られています。
でも、なぜ“ファンタジー=中世ヨーロッパ”が定番になったのでしょうか?
この記事では、その背景にある文化的・心理的な“お約束”をひも解いていきます。
「中世ヨーロッパ風」のテンプレはいつから?
ファンタジーにおける“中世風”の原型を作ったのは、J.R.R.トールキンの『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』とされています。
彼の作品は、エルフやドワーフ、魔法使いなど──現在のファンタジーに欠かせない存在を“中世ヨーロッパ”の土台で描きました。
その後、多くの創作物がこれをベースにしたため、**「中世=ファンタジーの舞台」**という構図が“お約束”として定着していったのです。
なぜ「近代」でも「古代」でもなく「中世」?
ポイントは次の3つです:
- 技術が未発達な世界=魔法が活きる
- 騎士道・身分制度=ドラマが生まれる
- 科学と宗教、秩序と混沌が交錯する時代
たとえば現代社会では、ドラゴンよりもミサイルの方が強くなってしまいます。
しかし中世レベルの技術なら、剣や魔法が「リアルな戦力」として成立します。
また、身分の格差がある世界観は、成り上がり・反逆・陰謀といった物語の起伏を描くのにうってつけです。
プレイヤー(読者)にとって“理解しやすい”構造
実は私たちにとって中世ヨーロッパ風の世界は、「学ばなくても理解できる構造」が整っているのも大きな理由です。
- 王様=権力の頂点
- 騎士=忠誠心と武力の象徴
- 魔女=恐れられる知識人
- 村人=平和を望む存在
このような“記号的”な構造が、プレイヤーや観客にとって非常に把握しやすいのです。
つまり「説明しなくても伝わる」というメリットが、創作サイドにとっても大きいのです。
心理的な“逃避先”としての中世
現代は情報も物もあふれていますが、それゆえに**「過剰な自由と選択」に疲れた人**も多いはずです。
その反動として、
- 明確な役割と秩序
- 魔法という不確かな力
- 自然と共に生きる暮らし
──こうした“静かな世界”に、無意識に惹かれるのかもしれません。
おわりに|中世ヨーロッパは「想像力のインフラ」
ファンタジーにおける中世ヨーロッパ風の世界観は、単なる舞台装置ではなく、**想像力の土台(インフラ)**として機能しています。
それは私たちの中にある「ロマンへの憧れ」や「物語の原風景」と密接につながっているのです。
次にRPGや映画で中世風の城を見かけたとき、
「またこれか」と思うのではなく──
「なぜ惹かれるのか」を少しだけ味わってみると、世界がもっと面白くなるかもしれません。